World Trip

Varanasi, India

Varanasi, India
05~20.06.2013

北米、中米、南米、ヨーロッパ、アフリカ北部、中東を通り過ぎ、ついにインドに入国。
旅を始めた8か月前と今とでは、旅に求めるものが明らかに変わってきていることを感じる。
当時は何もかもがとにかく真新しかった。全てが刺激だった。でも、今ではかつての刺激が刺激ではなくなり、より強い何かを求めている。綺麗な風景にも、素敵な街並みにも、荘厳な建築物にも、もう用はない。もっとドロドロした何かを、強烈な美しさを、水圧の強いシャワーみたいに、全身全霊に浴びたい。となると、インド以外にはないだろうというのが僕の見解。旅を始めた時からずっと楽しみにしていた国。そして、憧れていた国。かつて恋をした女性は、半年間インドにいた。僕は一体どんな風に変われるだろうか。でも、あんまり期待はしすぎないようにしなきゃと思う。期待は邪魔でしかない。けど、無理だな。そうならないように自分をセーブする方法を知らない。というわけで、飽き始めていた独り旅はいったんお休み。日本から気心知れた友人3人が合流しに来る。それによる変化もとても楽しみにしている次第で。

インド入国。
ビザを持っていない僕はまずアライバル・ビザを取得する必要がある。60USDを支払い、手続き。特にトラブルなくビザ取得完了。1ヶ月間の滞在を許可された。シングル・ビザなので、インド国外に出た場合は再度ビザの取得が必要。60USDは高すぎるので、1カ月はずっとインドにいる予定。様々情報をくれた旅人さんたちに感謝。助かりました。
そして!ついに3人の友人たちと合流。とても大切な友人たち。
ひとり目は建築士のツバサ。高校1年生からの付き合い。僕がギターを弾くバンドで、彼はベースを弾いていた。中学生時代は部活のバスケで敵同士だったりもした。心の奥深いところまで語り合うことができる、数少ない友人のひとり。最近1級建築士の資格を取得し、長く勤めた会社を辞めた。僕と同じ思春期の31歳。オーストリアのウィーンでは彼の妹にお世話になった。細かい部分がよく似ている兄妹で、ふたりとも大好き。
ふたり目はタニザワトモフミ・バンドのコーラス担当、サリー。付き合いはかなり古く、彼女が高校1年生の時。「七色」と「空路」をレコーディングした山梨県小渕沢のとある山小屋スタジオ。そこで彼女と出会った。スタジオのオーナーの娘である彼女は、僕のレコーディング現場に出入りしていて、それで仲良くなったのだった。あれからもう8年も経つと思うと不思議な気分だが、今では僕よりずっと年上のカナダ人と付き合っている。そのカナダ人の従兄弟マイクは僕の英語教師であり、トロントでは本当に世話になった。フィンランド人のマリアとミルカも、彼女がフィンランドに留学した時に知り合い、僕に紹介してくれたわけで、サリーのおかげで随分助けられてることを実感する。感謝。しかし、今でもお互いの関係は8年前と同じ。口うるさい兄貴と、ややこしい妹のまま。それぞれの口うるささとややこしさは、かつてよりも増したかもしれない。
そして3人目は、料理人のかなみ。はじめまして、只今ご紹介頂きました、カナミカワサキメルシーボークー。初めてのインド。コマンタレブ?カレーはお好き?ウイ、もちろん私はカレーが好き。へい、タニザワさんと出会ったのは、スペインのセビージャという街。出会いがしらに私のお尻を鷲掴みにしたあげく、「お前の握り飯をよこせ!」と叫んだ彼。アンビリーバボ。モロッコに来なければ京都にラクダを一万頭解き放ち鴨川をコブで埋めてやるという脅し文句に怯え、私は急遽モロッコへ。ところでタニザワさんは歌うたいだったんだって。シュクランディルハム!クスクスがなくなると奇妙な歌を歌い出すタニザワさん、握り飯を与えると、さだまさしのような笑顔になります。そんなナニザワさんと私、幾度となくタイマンもしたけれど、昨日の敵は今日の母!そんな仲です。
……一服しに行ってる間にデタラメを書かれたわけだが、ばかげてて面白いのでこのまま載せることにする。変なやつだということはわかっていただけたと思う。
こんな4人のパーティでデリーから一路ヴァラナシへ乗り込む。

ガンジス河のほとりの街、ヒンドゥー教の聖地、ヴァラナシがどんな街だったか。

それが困ったことに、正直あんまりうまく説明できそうにないのだ。
というのも、この街に着いてからというもの、僕の思考が明らかにストップしてしまったのである。
今まで回転し続けていたことの反動か、他の要素が増えたことによるものなのか。
原因はよくわからないけれど、今までと比べて一番大きな違いは、時間の流れの早さ。驚くほどあっという間に2週間が過ぎてしまった。今となっては僕はこの変化を前向きに受け入れているのだが、正直けっこう動揺した。
ひっきりなしに焼かれ続ける死体を見ても、ガンジス川に浮かぶ焼かれなかった死体を見ても、美しい朝陽を見ても、ガンジス川で沐浴してみても、不浄の地と呼ばれる川の向こう側へ行ってみても、心は静かなままだった。
もちろんかすかな微かな心の揺れ動きは、ある。それを見逃すほどにまで鈍感にはなっていないつもりだったが、それも正直よくわからない。妙に心が静かだった、という感想のみ。
バングラッシーはとても楽しかったけど、妙に瞑想がかったこの感じをむしろ助長した。
ヴァラナシは、死が充満して生が渦巻く街だなあ、なんて、ぼんやり川や人や牛や犬やヤギやそうじゃないものを眺めながら思ったくらいのもので。

今はヴァラナシから寝台列車で移動してジョードプルという青い街にいるのだが、もう一度ヴァラナシに戻ってみたいと思っている。

そんなわけで、今回はアレです。
写真見てくださいってことで。