World Trip

The Sahara, Morocco

The Sahara, Morocco
29.03.2013~03.04.2013

世界最大の砂漠、サハラ。
フェズ、マラケシュからのラクダ・ツアーが有名だが、やはり高い。
何故なら街から砂漠へ向かい、また街に戻るツアーだから。
だったら直接砂漠に行ってツアーを探した方がいいんじゃないか?
と、青い街シャウエンで考えていた。
すると、宿にひとりの男が現れる。
彼の名は「ブルー・マン」。
やけにロマンチストで妙ちくりんな男だったが(結局本名は教えてくれなかった)彼は砂漠を知り尽くしていた。
3ヶ月も砂漠で暮らしていたと言う彼は、
数々の名言(迷言)で僕らを楽しませてくれた。

メルズーガのほど近くにある砂漠の村「ハッシュルバイド」。
ここにある宿を紹介してくれた。
なんでもその宿のオーナーは魔法使いらしい。
どんな願いでも叶えてくれる魔法使いだ、と彼は言った。
魔法はさておき、その宿でもラクダや4WDのツアーを開催しており、
上に書いた街のツアーに比べて、驚くほど格安だった。
手をこまねいていた僕らは即座にその話に乗ることを決め、シャウエンを出た。
メルズーガへはバスでフェズを経由する。
乗り継ぎにしばらく時間があったので、フェズ散策。
なかなか面白そうな街だったが、長居は無用に思い、そのままメルズーガへ。
到着したのは翌日朝5時。
ほどなく宿のオーナーのオマールが迎えに来てくれた。
宿に着いて驚く。
すぐそこに、サハラ砂漠があった。
いつでも歩いて行けるような距離に、サハラ砂漠がある。
すごいところに来たな、と思う。
朝陽を見に行こう、とオマールが言う。
僕らは眠い目をこすりながら、それでも高揚を隠し切れない。
美しい朝陽だった。
ここから砂漠が始まり、同時に終わっている。
ただひたすらの砂が、ただひたすら美しかった。

余談だが、砂漠の天候には3種類ある。
晴れ、曇り、砂嵐。
雨は年に3度ほど降るか降らないかとのことだった。
ありがたいことに、僕らは天候に恵まれ続け。
自分は晴れ男だ、などとおこがましいことを思いはしないけれど、
旅を始めてからここぞという時に好天候に恵まれるのは、僕が根っからのスターだからだろうか。
嘘です軽いジョークです。
僕はただの31歳思春期です。

そんなわけで、到着したこの日も快晴。
雲ひとつない空。
午前中からラクダ・ツアーに出る。
正座するように座っているラクダ。
おもむろにまたがる。
ラクダは後ろ足から立ち上がる。
早速振り落とされそうになる。
思っていたよりラクダは背が高い!
見晴らし良好。
いざ、サハラのキャンプへ。

僕らが見たものは、いま振り返ってみると、
まぼろしがかっていたように思えてならない。

広大な砂漠。
巨大な砂丘。
流麗な風紋。
真っ青な空。
眩しい太陽。
風と砂の音。
それ以外に音はない。
砂浜とは違う、細かすぎる砂。
裸足で歩く感触。
灼けた砂の中は冷たく。
ベルベル・シャワー。(井戸水を浴びることをそう呼ぶ)
裸足で2時間。
辿り着いた砂丘。
すぐそこにアルジェリア国境。
燃え上がる夕陽。
吹きすさぶ風。
しかし静寂の日の入り。
しばし満天の星空。
それを飲み込んでいく月の出。
その幻想と荘厳。

月の出の赤。
月光と焚き火の炎。
気がおけない仲間の笑い声。

本当に現実だったのか?
テントに戻った僕らを待っていたのは、最高にうまいタジン。
満腹になり、今度はひとりで月明かりの砂漠を歩いた。
ひんやりした砂の中に足を突っ込む。
あたたかい。
昼間の逆だった。
どこか遠くでラクダのイビキが聞こえる。
モロッコで一番安いタバコを一本。
酒も飲まずに心地よく酔う。
夜の砂漠をゆらゆら漂う。
砂漠魚は砂を泳いでいる。
フンコロガシは案外何も転がしていない。
ぶつぶつ独り言。
誰にも聞かせられない独り言。
テントの近くで同じくひとり歩きの料理人を発見。
彼女も同じ気分だっただろうか。
テントで夢の続きを見るように眠る。

その後の砂漠での日々も、本当に素晴らしかった。
とてもじゃないけどここでは書き切れない。

またあの仲間たちともう一度砂漠で会いたい。
でも、みんなそれぞれ旅を続ける。
今の僕は、再びひとりぼっち。

ブルー・マン。
あんたが砂漠に3ヶ月もいた理由、今ならわかるよ。